グローバル化や人手不足が続く中、外国人労働者の雇用は年々増加しています。
しかし、いざ外国人を雇用しようと思っても、何をすれば良いか分からず、採用を見送ったということもあるかと思います。
今回は、外国人を雇用する方に向けて、確認事項や申請手続き、注意すべきポイントについて解説していきます。

  • 1.在留資格の確認
  • 2.業務に応じた在留資格の選定
  • 3.雇用契約の締結
  • 4.在留資格申請手続き
  • 5.雇用後の届出義務
  • 6.注意すべきポイント

在留資格の確認

既に日本にいる外国人を雇用する場合、最初に行うべきことは、外国人労働者の在留状況の確認です。
在留資格は、それぞれの資格に応じた活動や在留を許可するもので、法務省の外局である出入国在留管理庁が管理しています。
外国人が日本で働くためには、雇用先が予定している業務に適合した在留資格を持っていなければいけません。そのため、外国人の在留資格がどういった就労を許可するものであるかを確認する必要があります。

確認のポイント
1.在留資格の種類
在留資格は全部で29種類あり、そのうちの19種類に就労が認められています。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」は、ITエンジニアや通訳、デザイナーといった知識や技術を要する職種に適用されます。その他にも、「技能」では熟練技能が求められる職種で、料理人などが対象となり、「介護」では介護福祉士が介護等に従事することができます。

2.在留カードの確認
在留カードは外国人の在留資格や在留期限などの情報が記載された、身分証明書です。在留カードを確認し、「就労制限の有無」や「在留期限」をチェックする必要があります。

3.就労の可否と資格外活動の有無
「留学」や「家族滞在」の在留資格を持つ者が就労する場合には、「資格外活動許可」を取得する必要があります。この許可を持つ外国人は、原則として週28時間までのアルバイトが可能となります。雇用する際は、資格外活動の許可が得られているかどうか、就労可能な時間数も含めて確認が必要です。

業務に応じた在留資格の選定

在留資格の種類により、外国人労働者が行える業務は異なります。また、資格によっては学歴や経験が要件となっていることもあり、その基準を満たしているかどうかの確認も必要です。
申請数の多い就労可能な在留資格と、その適用業務内容は以下の通りです。

技術・人文知識・国際業務

大学などで学んだ知識や、母国で培った能力に関連する業務。
例)通訳、デザイナー、ITエンジニアなど。

企業内転勤

外国にある事業所から、日本の事業所へ転勤する場合など。
業務内容は「技術・人文知識・国際業務」に準ずる。

技能

産業上の特殊分野に属する、熟練した技能が必要な業務。
例)外国料理の調理師、航空機の操縦者、スポーツ指導者など。

介護

介護福祉士の資格を持つ者が、介護業務に従事可能。

特定技能:

【1号】特定産業分野で、相当程度の知識または経験が必要な業務。
【2号】特定産業分野で、熟練した技能が必要な業務。
例)建設業、介護業、外食業、宿泊業など。

技能実習

単純作業では修得できない技能を、実習によって習得するための活動。

雇用契約の締結

在留資格を選定した後、取得に向けて雇用契約を締結する必要があります。
雇用契約書について、以下のような注意が必要です。これらは、外国人が安心して働ける環境を提供するためだけでなく、雇用主がトラブルを避けるためにも重要となります。

業務内容は在留資格の範囲内で
業務内容は、在留資格で認められる活動の範囲内であることが求められます。範囲外の業務を指示した場合、資格の取り消しや不法就労に繋がるリスクがあります。契約書には具体的な業務内容を記載して、研修がある場合には、その内容と期間も載せましょう。

雇用契約書の作成と母国語対応
口約束ではなく、明確な雇用契約書を作成することが重要です。また、契約書はできる限り外国人の母国語で作成し、内容を十分に理解してもらうことをお勧めします。これにより、後から「聞いていなかった」といったトラブルを防ぐことができます。
母国語での作成が難しい場合は、厚生労働省が提供している八か国語対応の労働条件通知書のひな形を参考にするのもよいでしょう。

在留資格が取れなかった場合のことを書く
在留資格の取得を条件とした、停止条件付きの雇用契約を締結することをおすすめします。これは、在留資格が取得できなかった場合には契約が発効しないという形にするもので、不法就労のリスクを回避できます。契約書には「在留資格を取得した際に雇用契約が発効する」旨を記載し、外国人にもわかりやすい言葉で説明することが重要です。

在留資格申請手続き

労働契約を結んだ後、いよいよ在留資格の申請手続きに入ります。この手続きは、出入国在留管理庁に対して外国人の在留資格を取得するための申請を行うものです。主な手続きには、「在留資格認定証明書交付申請」や「在留資格変更許可申請」などがあり、在留資格や雇用側の状況によって提出する書類が異なります。

日本に呼び寄せる場合の申請の流れ
1.申請書類の準備
必要な書類をすべて揃え、各情報に誤りや不足がないか確認します。
2.出入国在留管理庁への提出
申請書類を所轄の地方出入国在留管理局に提出します。書類が不足していたり不備がある場合は、審査が遅れる可能性があります。
3.審査・交付
出入国在留管理庁による審査の後、在留資格が認定されると「在留資格認定証明書」が交付されます。この証明書をもとに、外国人労働者は日本への入国・就労が可能となります。
4.海外の日本大使館で申請
在外日本公館で、外国人本人が「在留資格認定証明書」を提示してビザを申請し、交付を待ちます。
5.来日
日本の空港でビザを提示すると、パスポートに上陸許可の証印が押され、在留資格とその期限が明記されます。
審査期間
通常、申請から許可までは1〜3ヶ月程度かかります。繁忙期や申請内容の複雑さによっては、さらに時間がかかる場合もあります。早めに申請手続きを開始し、雇用主と外国人労働者双方が安心して業務を開始できるようにスケジュールを調整しましょう。

雇用後の届出義務

外国人を雇用する際には、原則としてハローワークに外国人雇用の届け出を行う義務があります。この届出は「外国人雇用状況の届出」と呼ばれ、外国人を雇用する際、または離職の際に、氏名、在留資格、雇い入れ先の情報などを報告する必要があります。
届出の方法や提出期限は、外国人労働者が雇用保険の被保険者か否かによって異なります。具体的な提出方法や様式については、厚生労働省やハローワークの案内に従ってください。

注意すべきポイント

不法就労とは、在留資格が許可する範囲を超えて就労したり、在留期限を過ぎても更新せずに就労したりすることを指します。不法就労は、外国人本人にとっても、雇用主にとっても大きなリスクとなります。
不法就労が発覚した場合、外国人は退去強制措置を受け、雇用主も不法就労助長罪に問われ厳しい罰則が科される可能性があります。

不法就労助長罪とは?
不法就労となる外国人を雇用したり、不法就労を助長したりする行為に対して科される刑罰です。この罪に問われた場合、企業や事業主には最大で3年以下の懲役または300万円以下の罰金、場合によってはその両方が科せられる可能性があります。

不法就労を防ぐためにも、在留カードを定期的に確認し、在留期限を把握しておきましょう。また、その在留資格で許可されている業務内容や、資格外活動許可の有無も再確認することが大切です。

外国人を雇用するにあたっては、日本人と同等の労働条件を提供することが求められます。外国人であることを理由に、低賃金や不当な労働条件を課すことは許されません。日本の労働法では、外国人労働者にも労働基準法、最低賃金法、そして同一労働同一賃金の原則が適用されます。

日本人と同等の賃金を支払うこと
同じ職種や業務内容であれば、日本人と同じ賃金水準を提供することが義務付けられています。外国人労働者の賃金が不当に低い場合、在留資格の更新が認められない可能性があるため、賃金の公平性には十分注意しましょう。また、賃金の不平等が発生した場合、差額賃金の支払いを求められることがあります。
労働する上でのルールも日本人と同じ
外国人労働者には、日本人と同様に労働基準法、最低賃金法、労働契約法、社会保険制度が適用されます。賃金の支払い、労働時間、休暇、福利厚生などの法的な基準を遵守することで、外国人労働者が日本人と同様に待遇され、安心して働ける環境を提供できます。ただし、能力・技能や勤務実績によって異なる条件が適用される場合は不合理とならないよう配慮が必要です。

外国人を雇用するために、在留資格の存在はとても重要です。
雇用主がこれらの手続きを適切に行うことで、外国人労働者が安心して働ける環境を提供することができます。また、企業側も法的リスクを軽減し、外国人材の活躍を最大限に引き出すための基盤を築くことができます。
在留資格申請手続きや労務管理に不安がある場合は、行政書士や専門家のサポートを活用し、安心して外国人労働者を受け入れられる体制を整えましょう。
外国人雇用に関する具体的なご質問や手続きのサポートが必要な場合は、ぜひご相談ください。