遺言とは?
遺言とは、あなたが一生懸命築き上げた財産を、あなたの意思で、あなたの思う人への分配方法を書面に残したものです。
一般的には「ゆいごん」と呼び、書面を「遺言書」と書いたりすることが多いですが、正しくは「いごん」と呼び書面のことも「遺言」と書くのが正しいです。
法律により定められた厳格な様式に従って遺言を作成する必要があり、様式を満たさない遺言は無効となる可能性があります。
遺留分とは?
遺留分とは、法律により定められた、相続人が必ず相続することができる最低限の割合のことです。
全ての財産を他人に遺贈する内容の遺言をしても、相続人は遺留分に当たる部分については、遺贈を受けた者に対して、遺留分侵害額請求をすることで、原則として自己の相続分の2分の1に相当する金銭の支払いを請求することができます。
遺言を作成するときは、相続人の遺留分を侵害しないよう注意をする必要があります。
遺言を作成した方がいいケース
「兄弟姉妹ではなく、配偶者にすべて相続してほしい」
子や両親がいない場合、配偶者のほか兄弟姉妹(甥姪)も相続人となります。
遺産を疎遠な兄弟姉妹に相続してほしくない場合は遺言が必要です。
「事実婚・同姓のパートナーに遺産を取得してほしい」
戸籍に配偶者として記載されない限り遺産を相続することはできません。
苦楽をともにしてきたパートナーに財産を残すためには遺言が必要です。
「相続人の仲が良くないため、遺産分割でもめる可能性がある」
遺言がなければ、相続人全員で遺産分割協議をする必要があります。
遺産分割協議のトラブルを予防するために遺言を活用することができます。
「親族以外の、お世話になった方にも遺産を分配したい」
相続人以外の方に遺産が渡ることはありません。遺産の2分の1までは遺留分を検討することなくお世話になった人に遺贈できます。
3種類の遺言
民法には、「普通方式」と「特別方式」の遺言が規定されています。特別方式の遺言は、今まさに死期に面しているときに作成する危急時遺言と刑務所等に収容されていて普通方式の遺言を作成できないときに作成する隔絶地遺言があります。これらは極めて特殊な状況ですので、ここでは検討する必要がありません。
これから遺言を作成しようとする方には、3種類の普通方式の遺言を紹介いたします。
自筆証書遺言
遺言者が書面に、全文・日付・氏名を自筆して、捺印します。
本文は必ず自筆で書く必要がありますが、財産目録に関してはパソコンで作成することも可能です。ただしその場合、全ページに署名・捺印する必要があります。
また作成した遺言書は自ら保管し、相続が開始した後は家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
ただし2020年より法務局で自筆証書遺言書を保管するサービスが提供されており、そちらを利用した場合には検認を受ける必要がありません。
公正証書遺言
公証役場で、遺言者および2人以上の証人の立会いのもと公証人が遺言を作成します。そして遺言者が内容を確認し、署名捺印をすることで完成します。
遺言のプロである公証人が作成するため、自筆証書遺言と異なり様式不備で無効となってしまうリスクが低く、信用性も高いためご自身の意思を確実に遺すことができます。
また、公正証書遺言の原本は公証役場で保管され、家庭裁判所の検認を受ける必要がないので相続手続きをスムーズに進めることができます。
秘密証書遺言
その名の通り、遺言の内容を誰にも知られず、自分だけの秘密にできる遺言方式です。
遺言書に署名捺印し封筒に入れた上で、封筒にも遺言書と同じ印を押します。
その後公証役場において、証人2人以上の立会いのもと、自らの遺言であることを公証人に確認してもらいます。
自分で作成する場合は、様式不備等がないか注意が必要です。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
---|---|---|---|
作成者 | 本人 | 公証人 | 本人 |
ワープロ作成 | ✕ | 〇 | 〇 |
費用 | 低 | 高 | 中 |
確実性 | × | 〇 | × |
内容の秘密性 | ✕ | ✕ | 〇 |
保管 | 本人 ※1 | 公証役場 | 本人 |
検認 | 必要 ※2 | 不要 | 必要 |
証人 | 不要 | 2人 | 2人 |
おすすめ度 | 〇 | ◎ | ✕ |
※2 法務局で保管する場合は家庭裁判所の検認は不要
遺言を作成する際に注意すべきこと
相続人の方がお持ちになった遺言が様式を満たさず無効である場合や、相続人の遺留分を侵害しているためトラブルになることは多々あります。遺言を作成するときは以下の点に注意してください。
✔️丈夫な紙に読みやすい字で書く
✔️財産を特定できるようにする
✔️遺留分に注意する
✔️用語に注意する
✔️付言事項をつけて相続人の気持ちをなだめる
✔️見つけてもらえるように信頼できる第三者に保管してもらう
遺言は以上のことに注意していただければ、書くことができます。しかし、専門家が遺言書の作成にかかわることで、あなたの意思を確実に実現し、あなたが一生懸命築いてあげてきた財産をあなたの意思通りに分配することをお手伝いいたします。