
会社を立ち上げたいけれど、「株式会社と合同会社のどちらを選ぶべきなの?」とお悩みではありませんか?費用の違いや社会的信用、節税、経営のしやすさなど、どちらを選ぶかで会社の将来に大きな影響が出る可能性があります。
間違った選択をすると、後から「やっぱり株式会社にしておけばよかった……」と後悔するケースも。
この記事では、司法書士の視点から、株式会社と合同会社の違いや選び方、失敗しないポイントについてわかりやすく解説します。
1.合同会社と株式会社、どちらを設立すべき?
結論として、「設立費用を抑えたい」「少人数で自由に経営したい」という方には合同会社が向いています。一方で、「社会的信用度が大事」「柔軟に資金調達をしていきたい」「将来的に上場や大規模展開を目指したい」という方には株式会社が適しています。
両者はどちらも法人格を持つれっきとした会社形態ですが、費用・仕組み・拡張性に違いがあります。安易に「安いから合同会社でいいや」と決めると、取引先との信用問題や将来の変更コストがかかることもあるため、慎重な判断が必要です。
以下では、設立費用・運営・信用・税金などを比較しながら、あなたに合った会社形態を見つけていきましょう。
2.株式会社と合同会社の違いとは?
株式会社と合同会社は、いずれも法人格を持つ会社形態ですが、運営の仕組みや設立手続き、出資者の立場に違いがあります。
株式会社は「株主=出資者」「取締役=経営者」という構造で、意思決定には取締役会や株主総会を通す必要があります。一方、合同会社は「出資者=経営者」であるため、運営の自由度が高く、迅速な意思決定が可能です。
どちらも登記によって設立されますが、設立時の費用や維持管理の負担にも違いがあるため、目的や事業規模に応じた選択が重要です。
3.設立費用を比較!初期費用とランニングコストの違い
3-1. 設立時にかかる費用の違い
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
登録免許税 | 15万円~ | 6万円 |
定款認証手数料 | 3~5万円 | - |
印紙代 | 4万円 | 4万円 |
合同会社は定款認証が不要で登録免許税も安いため、初期費用は株式会社の半分以下で済みます。個人事業からの法人成りなど、コストを重視する起業には大きなメリットです。
3-2. 維持費用(決算公告・役員変更登記など)の違い
株式会社は、原則として毎年の決算公告が義務であり、官報掲載には数万円のコストがかかります。
また、役員の任期があるため、更新ごとに登記費用も発生します。
対して合同会社は決算公告の義務がなく、役員の任期も設定しなければ変更不要です。役員変更登記が不要なぶん、ランニングコストが低く済み、運営の負担が小さいのが特長です。
将来も小規模で運営する予定であれば、合同会社の維持費の安さはメリットと言えます。
4.信用力・対外的イメージの違い
4-1. 金融機関・取引先の印象はどう違う?
取引先や金融機関にとって、「株式会社」の社名には一定の安心感があります。社会的な認知度が高く、「しっかりした会社」と見られやすいため、融資や契約面でも有利に働くことがあります。
一方、合同会社は歴史が浅く、法人形態としての認知度もまだ低いため、「信用面でやや劣る」と見なされるケースもあります。特に初めての取引先や大手企業と契約する際は注意が必要です。
信用重視の業種では、株式会社を選ぶことがリスク回避につながります。
4-2. 「株式会社」の看板が与える安心感
「株式会社」という名称そのものが、信頼の証と受け取られることがあります。名刺や会社名に「株式会社」が入っているだけで、相手に安心感を与える効果があるのは事実です。
一方、「合同会社」はあまり耳馴染みがなく、規模の小さい会社や個人事業の延長のように誤解されることもあります。
ただし、AppleやGoogleなど外資系の日本法人も合同会社を採用しており、形態より実態が重視される流れも確実に進んでいます。安心感を取るか、コストを重視するかで選ぶとよいでしょう。
5. 経営の自由度・組織構造の違い
5-1. 意思決定のスピード感
株式会社では、重要な事項は取締役会や株主総会を経て決定されます。手続きはしっかりしていますが、時間がかかるため、経営判断のスピード感には欠ける側面もあります。
合同会社は、出資者=経営者が原則のため、全員の合意があればすぐに意思決定ができます。機動力が求められるスタートアップや小規模ビジネスでは、このスピード感が大きな強みになります。
5-2. 出資者と経営者の役割の違い
株式会社では「出資者(株主)」と「経営者(取締役)」が明確に分かれています。つまり、お金を出した人が経営に関わらないケースも多く、経営の自由度が下がります。
一方、合同会社は「出資者=経営者」が原則です。自分が出資した会社を自らの意思で運営できるため、意思決定が早く、内部の利害も一致しやすい構造です。
ただし、外部から出資を受けたい場合、株式会社のほうが柔軟でおすすめです。
「誰と一緒に経営するか」を含め、将来の組織設計を見据えて形態を選ぶことが重要です。
6. 出資・投資・株式制度の違い
株式会社は株式を発行できるため、複数の投資家から資金を集めやすく、ベンチャーキャピタルの出資や上場も可能です。経営と出資を分離しながら、資金調達がしやすいのが大きな特長です。
一方、合同会社には株式制度がなく、出資の受け入れには全出資者の同意が必要です。外部から資金を集めたい場合には、やや不向きです。
そのため、将来的に投資家からの資金調達や事業拡大を目指すなら、最初から株式会社を選ぶのが無難です。逆に、身内だけで小さく始めたいなら合同会社が適しています。
7. 節税・税金面での違いは?
7-1. 課される税金の額は、どちらも同じ
設立時を除いて、株式会社と合同会社に課される税金には差がありません。
例えば法人税の税率は、資本金が1億円以下で所得が800万円以下なら15%です。所得が800万円を超える場合は、800万円を超える部分の税率が23.2%、800万円以下の部分は15%となります。
また、地方法人税や法人住民税・事業税なども、基本的には同じく課されます。
つまり、形態によって法人税の額が大きく変わることはありません。法人税の節税を考える場合は、形態の違いよりも、役員報酬や経費の使い方、利益配分の方法に注目する必要があります。
7-2. 配当と役員報酬、どちらが有利?
株式会社では、利益の分配方法として「役員報酬」と「配当」があります。役員報酬は経費になりますが、配当は会社の損金にならず、配当を受け取る個人にも所得税が課税されます。
一方、合同会社では出資者に対して報酬を支払う際、配当ではなく「役員報酬」として処理されるのが一般的です。これにより、会社の損金として計上でき、法人税の圧縮がしやすいという特徴があります。
ただし、節税効果は会社の利益状況や役員構成によって変わるため、税理士への相談が必要です。
8. 株式会社と合同会社、あなたに合うのはどっち?
7-1. 株式会社が向いている人
★ 事業の成長を前提に、外部からの出資や上場を視野に入れている
★ 信用が重視される取引先(官公庁、大企業など)との関係を築きたい
★ 経営と出資を分け、専門の経営者に運営を任せたい
★ 将来的に企業売却やM&Aなども検討している
株式会社は「会社としての信頼性」を重視する方にとって、最もオーソドックスかつ安定した選択肢です
7-2. 合同会社が向いている人
★ 設立費用や維持コストを抑えて起業したい
★ 少人数でスピーディに経営判断をしたい
★ 経営と出資を分けず、自分で事業をコントロールしたい
★ 上場や大規模な出資を予定しておらず、内部資金で経営する予定
スタートアップ期や副業、士業など、シンプルに始めたい方に最適です。「自由な経営」と「低コスト」を重視する方に強く支持されています。
8. よくある質問Q&A
Q. 合同会社から株式会社への変更は可能ですか?
A. 可能です。ただし、定款変更や新会社設立といった手続きが必要となり、登録免許税などの費用も再度かかります。
Q. 法人形態を途中で変えるのはデメリットですか?
A. 信用や取引関係に影響を与える場合があるため、なるべく設立前にしっかり検討することをおすすめします。
Q. 税金や節税効果は違いますか?
A. 基本的な法人税率は同じですが、配当と役員報酬の扱いなど細かい点では異なります。税理士に確認しながら判断するのがベストです。
9. 会社設立なら、ゆかり法務事務所にお任せ
株式会社と合同会社は、どちらもれっきとした法人格を持つ会社形態ですが、費用、信用、柔軟性、資金調達、税務などで違いがあります。
「低コストで自由にやりたい」なら合同会社、「将来的な信用・成長を重視」なら株式会社が適していると言えるでしょう。
一度設立した後に変更するのは手間もコストもかかるため、設立前にしっかり比較し、自分に合った形態を選ぶことが大切です。
会社設立で迷っている方は、ぜひ司法書士などの専門家にご相談ください。
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