
不動産を所有している方が亡くなった場合、その名義を相続人に変更する必要があります。これを「相続登記」といいます。
2024年4月より、相続登記の申請は義務化されました。そのため、正当な理由なく申請を怠った場合には10万円以下の過料が科される可能性があります。
相続登記では、相続人の状況や遺産の分割内容に応じて、必要な書類が異なります。期限内に確実に登記を完了させるためにも、事前に必要書類を把握し、計画的に手続きを進めましょう。
この記事では、必要書類とその取得方法、注意点について解説します。
必要な書類の一覧
1.被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
2.被相続人の戸籍の附票(の除票)・住民票の除票
3.相続人全員の現在の戸籍謄本
4.不動産を取得する相続人の戸籍の附票・住民票
5.不動産の名寄帳・固定資産評価証明書・納税通知書
6.相続人の印鑑証明書
それぞれの書類の取得方法
1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
被相続人の親子関係や婚姻歴を確認するため、出生から死亡までの全戸籍が必要です。
被相続人が親であれば、広域交付制度を利用することで、最寄りの役所で全戸籍を一括取得できる可能性が高いです。
一方で、被相続人が兄弟姉妹である場合は、広域交付制度を利用できません。
まず被相続人の住民票がある市区町村で本籍地が記載された住民票の除票を取得し、本籍地を調査します。その後、本籍地にある役所で戸籍を取得する必要があります。その際、戸籍を必要する「正当事由(相続のため等)」を証明する必要があります。
2. 被相続人の戸籍の附票(の除票)・住民票の除票
被相続人の住所を確認するために必要です。
戸籍の附票は被相続人の本籍地で、住民票の除票は被相続人の住所地で取得することができます。
住民票の除票の方が取得しやすいですが、本籍地が分かる場合には、戸籍の附票を取得することをおすすめします。
なぜなら、戸籍の附票は、その戸籍にいる人全員の「住所の履歴」が記載されており、死亡時の住所だけでなく、過去の住所までたどることができるためです。
例えば、不動産の登記簿に記載されている住所と、死亡時の住所が異なる場合、住民票の除票では住所のつながりを証明できず、相続登記をすることができません。
そのような場合には戸籍の附票が必要となるため、初めから戸籍の附票を取得しておくとスムーズです。
なお、戸籍の附票を請求する時は、必ず「本籍入り」であることを申し出る必要がありますので、ご注意ください。
3. 相続人全員の現在の戸籍謄本
自身の戸籍は、本籍地が遠方でも、広域交付制度により最寄りの役所で取得可能です。
また、マイナンバーカードをお持ちの方等はコンビニでも取得可能な場合があります。
以下のサイトをご参照ください。
なお、必要となるのは「現在の戸籍」だけなので、注意しましょう。
➤コンビニで戸籍を取得する方法【地方公共団体情報システム機構】
4. 不動産を取得する相続人の戸籍の附票・住民票
不動産を取得する相続人の住所が登記簿に記載されるため、その証明として、戸籍の附票または住民票が必要です。住民票は、マイナンバーカードがあればコンビニでも取得できることが多いです。
5. 不動産の名寄帳・固定資産評価証明書・納税通知書
相続登記では不動産の評価額の0.4%を登録免許税として支払う必要があります。
評価額は、固定資産税の納税通知書があれば、同封された固定資産課税明細書に記載されています。
しかし、それには私道や山林等の、非課税の不動産は記載されていないことが多いです。
そのため、不動産がある市区町村に、名寄帳(なよせちょう)または固定資産評価証明書を請求する必要があります。
名寄帳は、請求に係る人がその市区町村内に所有する、全ての不動産が確認できるのでおすすめです。
郵送で申請できることが多いので、詳しくは各地域のホームページをご参照ください。
6. 相続人の印鑑証明書
法定相続分の通りに遺産分割を行わない場合、遺産分割協議書を作成する必要があります。
例えば、被相続人が父、相続人が母と子であるケースでは、遺産分割協議書を作成しなければ、母と子、それぞれ2分の1ずつの相続登記しかできません。
しかし、将来的に母も亡くなることを考えると、不動産は全て子が相続し、母には預金等の財産を多めに相続させる、という方が得策であることが多いです。
このように分けるには、相続人全員で遺産分割協議書を作成して、各人が実印で押印する必要があります。また、実印であることを証明するために印鑑証明書の添付が必要です。