
定款のひな形はインターネットで手に入りますが、意味を理解せずにコピペしてしまうと、後々トラブルの元になることも。
定款に盛り込むべき内容や注意点などを1条ずつ説明しますので、ぜひご活用ください。
この記事(第4回)で解説している条文
第28条:事業年度
第29条:剰余金の配当及び除斥期間
第30条:設立に際して出資される財産の価額
第31条:発起人
第32条:設立時の役員
第33条:最初の事業年度
第34条:法令の準拠
末尾の文言
他の条文は第1回、第2回、第3回へ
1.定款とは?
定款とは、会社の基本ルールを定めた文書です。
定款には、会社の名前・事業目的・本店所在地・設立時の出資など、会社運営の根本に関わる条文が記載されます。本記事以外の条文も、下記ページで解説していますので、ぜひご覧ください。
●【第1回】定款の作り方(商号~株式まで)
●【第2回】定款の作り方(株主総会まで)
●【第3回】定款の作り方(取締役~取締役会まで)
2.1条ずつ解説|記載例とその解説
2-1.第28条:事業年度
第28条 当会社の事業年度は、毎年6月1日から翌年5月31日までとする。
事業年度とは、会社が損益計算をする対象となる一定の期間のことです。日にちは自由に定められますが、3月末決算を採用する会社は多く、その場合は「4月1日~翌年3月31日」となります。
事業年度の長さは、法令上で原則として「1年を超えることはできない」と定められています。
2-2.第29条:剰余金の配当及び除斥期間
第29条 剰余金の配当は、毎事業年度末日における最終の株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者に対して行う。
2 剰余金の配当は、支払開始の日から満3年を経過しても受領されないときは、当会社はその支払義務を免れるものとする。
剰余金の配当とは、株主に会社の剰余金を金銭として分配することで、その方法と有効期限について定めています。
また、配当金の支払請求権10年で消滅しますが、定款に定めることにより短縮することができます。
2-3.第30条:設立に際して出資される財産の価額
第30条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金500万円とする。
2 当会社の資本金の額は金100万円とする。
会社設立時に出資する金額と、資本金の総額を示したものです。
1円でも会社を設立できますが、資本金が少なすぎる会社は、取引先や金融機関からの信用を得にくいです。事業計画や業種を考慮して慎重に決定しましょう。
2-4.第31条:発起人
第31条 当会社の発起人の氏名及び住所、設立に際して割当てを受ける株式数並びに株式と引換えに払い込む金銭の額は、次のとおりである。
住所 東京都千代田区千代田1番1号
山田太郎
普通株式100株 金100万円
発起人は、会社の設立に必要な手続をする人です。定款の作成・資本金の出資・取締役の選定などを担い、会社設立後にそのまま取締役や株主になることが一般的です。
現物出資をする人がいれば、現物出資する物を具体的に記載します。
そして現物出資が500万円を超える場合には、調査しなくてはいけません。
2-5.第32条:設立時の役員
第32条 当会社の設立時の役員は、次のとおりである。
設立時取締役 山田太郎
同 山田花子
設立時代表取締役 住所 東京都千代田区千代田1番1号
山田太郎
発起人が設立時取締役等を選任します。
取締役が1名であれば、その者が代表取締役となるのが一般的です。取締役が複数いる場合には、別途「代表取締役の定め」を設ける必要があります。
2-6.第33条:最初の事業年度
第33条 当会社の最初の事業年度は、当会社成立の日から令和8年3月31日までとする。
会社の設立日から最初の決算期までの期間を定めたものです。
初年度は、設立の時期により通常の事業年度よりも短くなるケースが多いため、28条とは別に期間を定めます。
2-7.第34条:法令の準拠
第34条 本定款に定めのない事項については、すべて会社法その他の法令の定めるところによる。
会社法では、一定の内容を自由に定款で定めることができる一方で、定款に書かれていないことは会社法に従うことになります。その枠組みを明記することで、解釈や運用のトラブルを防止します。
2-8.末尾の文言
以上、株式会社の設立のため、この定款を作成し発起人が記名押印する。
令和8年1月1日
発起人
住所 東京都千代田区千代田1番1号
山田太郎
定款の最後に記載する文言です。定款の真正性を担保するため、すべての発起人が署名し、又は記名押印をしなければなりません。
なお、電子定款として提出する場合には、発起人の電子署名が必要となります。
3.定款作成は慎重に。分からないときは専門家に相談を
この記事では会社設立を考えている方や、定款を自分で作りたい方のために、定款の条文を1つひとつ丁寧に解説しました。
定款は会社のルールを定める最も重要な文書です。ひな形を流用するだけではなく、自社に合った内容かを確認しながら、自分で作成する力をつけることは将来の経営にも役立ちます。
とはいえ、誤った定款は設立後のトラブルつながる可能性や法的リスクもあるため、必要に応じて司法書士など専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
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