定款のひな形はインターネットで手に入りますが、意味を理解せずにコピペしてしまうと、後々トラブルの元になることも。
この記事では、会社設立を考えている方や、定款を自作したい方のために、定款の条文を1つひとつ丁寧に解説します。定款に盛り込むべき内容・記載方法・実務での注意点などを逐条でわかりやすく説明していきますので、ぜひご活用ください。

1.定款とは?

定款とは、会社の基本ルールを定めた文書です。
定款には、会社の名前・事業目的・本店所在地・設立時の出資など、会社運営の根本に関わる内容が記載されます。定款の商号~株式、株主総会までは、下記の記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。

2.逐条解説|定款のサンプルとその意味

2-1.第19条:取締役の員数

第19条 当会社の取締役は、1名以上とする。

会社法上、取締役は最低1名いれば株式会社を設立・維持できますが、取締役会を設置するためには3名以上が必要です。よって、取締役会設置会社を前提とする場合、「3名以上」と定款に明記します。
実務においては、将来の人員増減や辞任・死亡などに柔軟に対応するために「3名以上10名以内」といった幅を設けるケースも見られます。

2-2.第20条:取締役の任期

第20条 取締役の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
 2 任期満了前に退任した取締役の補欠として、又は増員により選任された取締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。

会社法上、取締役の任期は原則2年以内とされていますが、定款で定めることにより最長10年まで延長することが可能です。ただし、非公開会社(株式の譲渡制限がある会社)に限られます。
実務上は、規模の大きくない企業であれば、取締役の任期を10年に設定し、役員変更の都度の登記を省略するという方針を取ることが多いです。

2-3.第21条:代表取締役及び社長

第21条 取締役会は、その決議により、取締役の中から代表取締役1名以上を定め、そのうち1名を社長とする。
 2 社長は、当会社を代表し、当会社の業務を執行する。

取締役会設置会社では、取締役会で代表取締役を選定する必要があります。代表取締役は会社の代表権を持ち、日常的な業務執行の責任を担います。

2-4.第22条:取締役会の招集権者及び議長

第22条 取締役会は、法令に別段の定めがある場合を除き、社長が招集し、議長となる。

会社法第366条では、取締役会は「取締役が招集する」とされていますが、定款により誰が招集権を持つかを規定することができます。一般的には代表取締役が招集・議長を兼ねる形で定めることが多いです。

2-5.第23条:取締役会の招集通知

第23条 取締役会の招集通知は、会日の1日前までに各取締役及び監査役に対して発する。ただし、緊急の必要があるときは、この期間を短縮することができる。
2 取締役及び監査役の全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで取締役会を開くことができる。

会社法第368条では、取締役会の招集通知は、相当の期間をもって行う必要があるとされており、多くの企業では定款で具体的な期限を設けています。

2-6.第24条:取締役会の決議方法

第24条 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その出席取締役の過半数をもって行う。
 2 決議について特別の利害関係がある取締役は、議決権を行使することができない。

会社法第369条によれば、原則として「取締役の過半数が出席し、出席した取締役の過半数の賛成」で決議が成立します。このような形式的要件が満たされていない決議は、無効となる可能性があるため、定款で明確に規定しておくことが重要です。
この条文は一見すると形式的に思われがちですが、取締役会のガバナンスや意思決定の透明性を担保する基盤となるものです。トラブルを防ぐためにも、議事録に出席者と賛否を明記し、形式を遵守する運用を心掛けることが求められます。

2-7.第25条:取締役会の決議の省略

第25条 取締役会の決議の目的たる事項について、取締役又は株主から提案があった場合において、その事項につき議決権を行使することができるすべての取締役が、書面又は電磁的記録によってその提案に同意したときは、その提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。ただし、監査役が異議を述べたときは、この限りでない。

いわゆる「みなし決議」に関する規定です。すべての取締役の同意が得られれば、実際に取締役会を開催せずとも、決議があったものとみなすことができます。日常的な業務の迅速化や、物理的な会議開催が困難な場合に非常に有効な制度です。
ただし、この省略制度を適用するためには、「全取締役の書面または電磁的記録による同意」が必須です。また、監査役設置会社では、監査役に内容の通知が必要になります。

2-8.第26条:取締役会議事録

第26条 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、その経過の要領及び結果を記載又は記録した議事録を作成し、議長及び議事録の作成に係る職務を行った取締役がこれに署名又は記名押印もしくは電子署名を行う。

会社法では議事録の作成義務が明記されています。
議事録には、会議の開催日時・場所・出席者・議題・発言内容・決議内容などを正確に記載する必要があります。また、出席した取締役と監査役の署名または記名押印が必要です。
議事録は原則として会社で10年間保管する義務があるため、適切な管理体制を整えておくことも重要です。

2-9.第27条:取締役の報酬等

第27条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として当会社から受ける財産上の利益は、株主総会の決議によって定める。

取締役の報酬等は原則として「株主総会の決議」によって決定される必要があります。これは、経営陣による自己報酬の恣意的な設定を防止し、株主の監督を確保するための仕組みです。
実務上は、総額での承認(例:年額金〇〇万円)を得たうえで、各取締役への具体的配分は取締役会で決定する形が一般的です。

3.定款作成は慎重に。分からないときは専門家に相談を

定款は会社のルールを定める最も重要な文書です。ひな形を流用するだけではなく、自社に合った内容かを確認しながら、自分で作成する力をつけることは将来の経営にも役立ちます。
とはいえ、誤った定款は設立後のトラブルつながる可能性や法的リスクもあるため、必要に応じて司法書士など専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

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