
相続トラブルは、仲の良い家族であっても起こり得ます。長年の不公平感が表面化して深刻な争いへ発展してしまうケースも少なくありません。こうした事態を未然に防ぐために、最も効果的な対策が 「遺言書を作成しておくこと」 です。
この記事では、兄弟間での相続争いを防ぐための遺言書の書き方を、司法書士が分かりやすく解説します。
1.兄弟の間で起きる相続トラブル

「私には妻と2人の子どもがいます。長男Aは近所に住んでいて、よく面倒を見てくれます。しかし、次男Bは遠くで暮らしていて、連絡もほとんどなく疎遠です。Aに多く財産を渡したいのですが、兄弟間でもめないために、どうしたらよいでしょうか?」
「こうした争いを防ぐため、最も有効なのが遺言書を作成しておくことです。ただし、作り方や記載内容に注意すべきポイントがありますので、詳しく解説していきます。」

2.財産をもれなく正確に記載する
遺言書を作成する際は、 財産を漏れなく、正確に記載することが重要です。
2-1.記載がもれてしまうと?
遺言書に記載のない財産については、遺産分割協議を行う必要があります。
そのため、疎遠な兄弟がいたり、不仲な場合に財産をどう分けるのかをめぐって対立が生じやすくなります。
こうした事態を避けるためには、財産目録を作成し、財産の全体像を把握した上で遺言書を作成することが大切です。
2-2.財産が正確に書かれていないと?
財産の記載が不正確な場合、相続人はまず「財産の調査」から始めなければならず、大きな負担となります。預貯金であれば「金融機関名・支店名・口座番号」、有価証券であれば「銘柄・株式数・証券会社名」など財産を特定できるよう正確に記載しましょう。
また、不動産について「私の住んでいる自宅の土地建物」のような曖昧な書き方をしてしまうと、相続登記ができず、手続きが止まってしまう可能性があります。不動産は、登記事項証明書を取得して「所在・地番・地目・地積」など記載してある内容を正確に書き写しましょう。
3.相続財産を共有にしない
よくあるトラブルが、不動産を兄弟で共有にしてしまうケースです。
たとえば、兄はその家に住み続けたいと考え、弟は売却して現金化したいと希望して意見が割れてしまうことがあります。共有不動産は、売却などの処分には全員の同意が必要なため、意見が合わないと手続きが進まなくなってしまいます。固定資産税や修繕費の負担割合をめぐって不満が生じることも少なくありません。こうしたトラブルを避けるため、なるべく単独所有させる形にして、相手方には預金などを多く取得させることをおすすめします。
4.遺留分に注意する
遺留分とは、相続人に保障された「遺産の最低限の取り分」のことです。遺留分を侵害した遺言があり、その相続人から「遺留分侵害額請求」がなされた場合、遺留分に相当する金額を支払わなければいけません。そうなると、遺留分の金額や評価方法をめぐって対立が生じるケースも多く見られます。
遺留分について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
5.予備的遺言をしておく
予備的遺言とは、指定した相続人が先に亡くなった場合に備えて、次の受取人を決めておく遺言のことです。親より子どもが先に亡くなるケースは、現実に起こり得ます。
たとえば、遺言に「長男に自宅を相続させる」と記載していても、長男が遺言者より先に死亡していた場合、この内容は実現できません。しかも、この場合には代襲相続は発生せず、長男の子(孫)に自動的に相続されることもありません。
そのため、「長男が先に亡くなっていた場合は、次男に相続させる」などの予備的な記載をしておくと安心です。
6.専門家を遺言執行者に選任する
遺言執行者とは、遺言の内容を実現する役割を担う人のことです。預金払い戻しや不動産の相続登記、遺贈の手続きなど、遺言の実現のため幅広い業務を担当します。
遺言執行者を相続人の一人が務めると、「財産を隠しているのでは?」などといった疑念が生じ、他の相続人から反発を受けることがよくあります。
そのため、司法書士などの専門家を選任することを、強くおすすめします。
専門家が執行者となることで、公平・中立な立場から、迅速・正確に手続きを進めることができます。詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
7.付言事項を残しておく
付言事項(ふげんじこう)とは、遺言に付け加える自由記述のメッセージで、法的拘束力はありません。しかし、“なぜこの遺言になったのか”を伝えることで、相続分に差がある場合でも、相続人達が遺言を受け入れやすくなります。たとえば、次のような言葉を添えます。
「長年介護をしてくれた長男Aには非常に苦労をかけました。その感謝として多めに財産を遺します。」
「次女には大学や留学の費用など、できる限り援助してきました。長女にはそのような金銭的な援助ができなかった分、多めに財産を遺したいと思います。」
8.円満な相続を望むなら、専門家へ相談を
兄弟間の相続トラブルを防ぐためには、遺言書を正しく作成することが大切です。
① 財産を正確に記載する
② 共有名義にしない
③ 遺留分に配慮する
④ 予備的遺言を備える
⑤ 専門家を遺言執行者に選任する
⑥ 付言事項で気持ちを伝える
といったポイントを押さえることで、争いの芽を大きく減らすことができます。
相続は、法律だけでなく感情面や家族関係が複雑に関わるデリケートな分野です。安心して手続きを進めたい方は、足立区北千住 ゆかり法務事務所の無料相談をご活用ください。足立区・葛飾区エリアの相続・遺言に強い司法書士が丁寧に対応いたします。
「相続の手続きがわからない」「遺言書を準備しておきたい」「生前対策を教えてほしい」など、当事務所には、さまざまなお悩みを抱えた方がいらっしゃいます。皆さまにとって難しい法律のことが、少しでもわかりやすいように、どのような相談にも「丁寧でわかりやすい説明」を心掛けています。
どうぞ、お気軽にご相談ください。
司法書士 劉 洋


9.よくある質問
Q. 兄弟の一人が“介護をした”ことは相続で評価されますか?
A. はい。長期間の介護や生活支援があった場合、「寄与分」として評価される可能性があります。ただし、寄与分をめぐって兄弟間で意見が対立しやすいため、遺言書であらかじめ評価の方法を示しておくと安心です。
Q. 自筆証書遺言でも相続トラブルを防げますか?
A. 一定の効果はありますが、不正確な記載や形式不備があると無効になることもあり、かえって争いの原因になりかねません。トラブルを避けたい場合は、公正証書遺言をおすすめします。
Q. 遺言書を書くタイミングはいつが良いですか?
A. 遺言は、判断能力が不十分になると作成できなくなります。そのため、判断力がしっかりしている段階で早めに作成することが大切です。



