
遺留分を正しく計算するためには、まず「遺留分の対象となる財産」を把握することが欠かせません。しかし、「生前贈与は含まれるの?」「生命保険は?」など迷いやすいポイントがあります。この記事で、遺留分の計算方法、贈与の範囲、注意点などを司法書士が分かりやすく解説しますので、ぜひご覧ください。
1.遺留分の計算、何からはじめる?
遺留分を計算する際は、まず「遺留分の対象となる財産」を求めます。
これは、①相続が開始した時点の財産に、②生前に行われた贈与を足し、③全ての債務(借金など)を引いて計算します。式で表すと、次のようになります。
遺留分の対象となる財産
= ①相続時の財産+ ②生前の贈与-③全ての債務
たとえば、亡くなった時点の財産が2,000万円、生前贈与が300万円、借金が200万円ある場合、
2,000万円+300万円-200万円= 2,100万円
これが遺留分の対象となる財産の額です。次に、①~③の内容を詳しく説明していきます。
2.①相続開始時の財産とは?
①相続開始時の財産とは、亡くなった方が、死亡した時点で所有していたすべての財産をいいます。
預貯金・家や土地・有価証券などの一般的な財産はもちろん、遺贈や死因贈与によって処分される財産も含まれます。
たとえば、相続人が1,000万円を受け取り、友人には遺言で500万円渡す場合、1500万円が「相続開始時の財産」として扱われます。
また、目に見える財産だけでなく、未払いの報酬、貸しているお金なども含まれます。逆に、死亡によって消滅する、慰謝料請求権などは含まれません。
3.②生前に贈与した財産とは?
遺留分の対象となる財産には、生前に行われた贈与も含まれます。
しかし、その全てが無制限に対象となるわけではありません。原則として 「相続が開始する前、1年以内の贈与」 に限ります。(民法1044条1項)また、相続人以外への贈与もこれに含まれます。
たとえば、亡くなる半年前に友人へ車を贈与していた場合、遺留分の計算に組み込まれます。
そして、この原則には多くの例外があります。以下で詳しく解説します。
【例外①】 1年より前の贈与も含まれる?!
原則では1年以内の贈与に限られますが、1年より前でも例外的に含まれる場合があります。 それは、「亡くなった方と贈与を受けた人が、遺留分を侵害することを知りながら行った贈与」です。
つまり、遺留分を減らす目的で行われたと認められれば、極端な話、50年前の贈与であっても対象に含まれます。ただし、この主張するには、
「遺留分を侵害することを、双方が認識していた」
ことを、遺留分を請求する側が立証しなければならず、非常にハードルが高いです。
【例外②】 生命保険金は?
生命保険金は原則として「受け取る人の固有の財産」とされ、相続財産に含まれません。
しかし、ここにも例外があります。それが 「著しく不当な場合」 です。
たとえば、相続人の1人が高額な死亡保険金を受け取り、他の相続人との間に極端な不公平が生じるような場合、贈与として計算される可能性があります。
【例外③】 相続人への贈与は”10年分”が対象!?
生前に相続人が受け取った結婚資金、事業資金などは特別受益として扱われます。この特別受益は相続人のみで、該当する場合は相続の開始前、10年間の贈与が計算に含まれます。
対象となるのは「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本」のための贈与です。
たとえば、子どもに結婚資金として300万円を渡した、家を買う頭金として500万円を援助した、といったケースが典型です。
4.③債務の全額とはどんなもの?
ここまでに説明したプラスの財産に加えて亡くなった方が負っていた債務(借金など)をすべて差し引く必要があります。
原則として、死亡時点で存在していた債務はすべて対象となり、下記ようなものがあります。一方で、葬儀費用や相続税など「遺族が負担する性質の費用」は含まれません。
・金融機関からの借金
・未払いの税金、年金、健康保険料
・未払いの医療費、賃料
・損害賠償債務 など
5.最後に、遺留分の割合をかけて計算
以上で、「遺留分の対象となる財産の額」の計算は完了です。
計算した金額に、遺留分の割合に応じて、実際に請求できる金額を算出します。
それでは、財産の額が4,000万円、相続人が妻と長男・次男のケースで、具体的に請求できる遺留分を計算してみましょう。
①相続人全体での遺留分(全体の遺留分)を求める
全体の遺留分は、誰が相続人になるかによって次のように決まります。
・(祖)父母のみが相続人の場合:全体の1/3
・それ以外の場合:全体の1/2
今回のケースでは、相続人が妻と子2名なので、
4,000万円 × 1/2 = 2,000万円が、全体の遺留分となります。
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② 各相続人の遺留分(個別の遺留分)を求める
次に、算出した全体の遺留分を、各人の法定相続分の割合に応じて振り分けます。
法定相続分は、配偶者が1/2、子全員で1/2なので、それぞれの遺留分は以下のとおりです。
・妻 2,000万円×1/2=1000万円
・長男 2,000万円×1/4=500万円
・次男 2,000万円×1/4=500万円
今回のケースでは、妻・長男・次男がそれぞれ単独で、遺留分を侵害した者に対して、上記の金額を遺留分侵害請求として支払ってもらうことを要求できます。
遺留分についてもっと詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
6.相続・遺言でお悩みならゆかり法務事務所へ
遺留分の計算には、「どこまでが相続財産に含まれるのか」「生前贈与はどの範囲で対象となるのか」など、多くの法律判断が関わります。少しでも不安がある方は、北千住のゆかり法務事務所の無料相談をご活用ください。足立区・葛飾区エリアの相続・遺言に強い司法書士が丁寧に対応いたします。
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どうぞ、お気軽にご相談ください。
司法書士 劉 洋


7.よくある質問
Q. 生前贈与は、すべて遺留分の計算に含まれますか?
A. 原則として対象となるのは「相続開始前1年以内の贈与」です。ただし、相続人への特別受益や、遺留分を侵害することを知りながら行った贈与は、それより前でも算入される場合があります。詳しくは本記事の解説をご覧ください。
Q. 生命保険金は遺留分にの計算に含まれますか?
A. 原則として、遺留分の計算には含まれません。しかし、保険金が極端に高額で、他の相続人との間に著しい不公平が生じる場合には、算入される可能性があります。
Q. 贈与の「持戻し免除」をしていれば、遺留分の計算に含ませんか?
A. いいえ、持戻し免除をした場合でも、遺留分の計算に含まれます。持戻し免除は、相続分の計算に関係する制度であるため、遺留分には影響を及ぼしません。




